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5/5(木)〜7(土) 南木曽の木地屋さんに会いに行く旅 [仲良くごはん]

酔っぱらっていたのか、5時半に起きないといけないのにもかかわらず、目覚ましかけていなかったもよう。同じ部屋のSさんが「大丈夫かぁー?」と起こしてくださって、電車に間に合った!Sさんに感謝!
咲花駅から磐越西線にゴトゴトゆられて新潟駅へ。いつの間にか眠りこけてしまったもよう。「お客さーん!」と車掌さんが声をかけてくださって、「わぁ!すみませんすみません」と降りる。
ちゃんと起こしてくれる人がいてよかった。。。おかげさまで無事に長野行きバスに乗り込み、うとうとしてたらあっという間に長野市内へ。ハナミズキが満開できれい。

バスを降りたちょうど目の前におやき専門店。迷わず中に入って、春らしい具のおやきを購入。長野から塩尻までの電車からの風景がとてもよかった。山の中を走る電車。
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お昼2時半に伊那市に到着。直子さんが迎えてくださり、「工房やまと」のスタッフの方が車を出してくださり、「かんてんぱぱホール」まで連れていってくださる。こちらで開催されていた南木曽の木地屋・小椋榮一さんの作品展会場へ到着すると、直子さんのご紹介で、キリッと場内でお客さんの応対をされていた正幸さんがわざわざ挨拶をしにきてくださる。

正幸さんのお父様である榮一さんの一周忌の頃と重なった今回の作品展。もちろん私はご本人にお会いしたこともなかったけれど、直子さんが2009年からくりかえし南木曽に通い、時には生活にお邪魔しながら、木と共に生きてこられたその人の声に耳をすませてまとめられた榮一さんの物語を読んだあとだったので、不思議な親しみの感があった。

直径1mはあるだろう拭き漆の丸卓(こたつのように甲板を載せている卓。甲板は大きなお盆状)を見て、こんな大きなお盆、どうやって作るんだろう!?と驚いた。平らで漆がつやつやしていて杢目はじーっと見ていて飽きない。榮一さんのお盆や食籠(じきろう。ふたがついた食べ物を盛る器)をまじまじと見つめていると直子さんが解説してくださる。数百年の風雪をくぐり抜けた木の中にあらわれる様々な種類の杢目と、それらを引き出し、こうして見えるものにし、人びとの生活のすぐそばに持たせてくれる木地屋さんの技、仕事。すごいなー、と何度も感嘆してしまう。

直子さんの長野県上松技術専門校時代のK先生と一緒に珈琲を飲んだり、かんてんゼリー試食をしに行ったり、地元のお寺の和尚さんともう一杯珈琲を飲んだりして、夕刻となり、榮一さんのお連れ合い・シガ子さんが南木曽へお帰りになる車に直子さんと一緒に便乗させていただく。車の中でのおしゃべりがこの上なく楽しかった。シガ子さんも直子さんも、女性として生きる先輩として素敵すぎ!

直子さんが手配してくださった大妻籠の宿「こおしんづか」で、シガ子さんも一緒に夕ごはん。山菜や川魚、筍といった山の恵みを味わう。まん丸の五平餅もおいしかった〜。他のお客さんとの会話に思うところあり。あとで直子さんも同じように感じていたようで、ひそひそ話で盛り上がる。
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翌朝、宿の近くに咲いていた山吹。
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バスに乗って、正幸さんの「工房やまと」へ。
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お店の奥のストーブの近くで珈琲をいただく。この小さなスペースがなんとも心地よい。珈琲のおいしさも、ここでしか味わえないと思った。正幸さんの作品であるスツールに一目惚れ。いつかこんな空間を自分の住む家につくりたい。
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一服の後、工房も見学させていただいて、榮一さんのお墓へ。シガ子さんのお孫さん・正幸さんの娘さんのAちゃんにお会いする。すごく良い子だった。Aちゃんのお母さんが運転する軽トラックの荷台に、Aちゃんと直子さんと私で3人で立ち乗りし、山道をゆく。途中、気になっていた「イタドリ」が生えているところに降り立ち、それをつまみながら帰る(赤い節のあるのがイタドリ)。Aちゃんが学校から帰る道々には山のおやつがいっぱいで、とってもうらやましい。
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一端工房へ戻り、そのあと直子さんの、お世話になった方々への「本ができました」の挨拶まわりに同行させていただく。正幸さんが運転をしてくださる。軒先にも小径にも山々にも春・春・春。直子さん曰く、こちらの春は「じわじわと春」ではなく、「ぱぁ〜っと一斉に春!」なんだそう。白・薄い桃色・濃い桃色のはなもも。途中、正幸さんが車をぐるっと遠回りしてくださり、満開の名もなきしだれ桜の花見。
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お寺に飼われていたワンコ。うたたねしている。気持ち良さそう!
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江戸時代の街並で有名な妻籠にも立ち寄る。栗のお菓子のお店「澤田屋」さんで正幸さんおすすめの「厳固岩」を購入(日本酒にもよく合う、おいしいお菓子♪)。おそば屋さんで昼食。正幸さんにならってネギなしで。

そのあと、直子さんの上松技専時代のK先生のお宅に寄せていただき、本当にすばらしいたたずまいのお宅の一室で、北原先生の作品の数々と、黒田辰秋さんの資料集などを見せていただく。私が京都でいちばん好きな喫茶店は京大前の「進々堂」なのだけれど、そこにあるどっしりした長テーブル・長椅子が人間国宝の方が作られたということは見聞きしていた。実はその方が黒田辰秋さんという方で、刳物(くりもの)や指物(さしもの)などの木工家・漆芸家であり、榮一さんも交流されていたということ。その事実を知るところとなったことに不思議な縁を感じてしまう。また、K先生は学生時代に京都に暮らしておられたそうで、その頃のわくわくするようなお話を聞かせてもらい、先生おすすめの骨董屋さんも教えてもらう。とても楽しい時間だった。先生の工房もこれまた味があり、工房をすべて先生が作られたと聞いて驚き。生き方がすごくかっこよくて惚れ惚れした。

日が暮れてきて、K先生に「工房やまと」まで送っていただく。翌日の榮一さんの一周忌法要のための準備をされている小椋家の皆さんに混じって、直子さんとお庭や玄関のお掃除を手伝わせていただく。ほうき好きにはたまらない、いろいろな掃き心地のほうきがあって、使わせてもらう。

一段落したところで、今晩は結局、小椋家でお世話になることに。本当にありがたいことで恐縮してしまう。直子さんが小椋家の人々と築いてこられた関係があってこそである。
正幸さんとシガ子さんと直子さんと一緒に食卓を囲むと、まずはじめに小椋家の食器棚からぐいのみが10数個取り出され、好きなのを選ばせてもらう。もちろんすべて、榮一さんや正幸さんが作られたもの。ここはやはり比較的大きめを選んでしまう。で、それで味わう新潟からお土産で持ってきた日本酒も、正幸さんが好きな地元の日本酒も、どれもおいしい!

正幸さんがお店にも並んでいたまな板の上でみょうがを刻み、しょうゆで味付けし豆腐にのせてくださった。お店で見て気になっていた「椿皿」。伝統的なかたちだそう。「どうして椿皿と言うか知ってる?」と名前の由来を教えてくださる。少し高台になっていて、たくあんを2切れ真ん中に置いたら、椿の花のように見えるから、「椿皿」というのだそう。昔からあるかたち。昔の人はなんて粋なのでしょう!
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そんな話をしている私たちの横で、妹みたいにかわいくて好きになってしまったAちゃんが、よもぎ、わさびの葉っぱ、イタドリ、、、と順番に天ぷらにしてふるまってくれる。かりっと上手に揚がっていてとてもおいしい。榮一さんもお好きだったというお塩でいただく。
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ほろ酔いになってきた頃、正幸さんが炊きあがったご飯でおにぎりをにぎってくださった。お釜のどこの位置で炊けたかによって、おにぎりの味わいが違う。
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途中、直子さんとシガ子さんと3人で大笑いした。何がおかしかったのか忘れてしまったけど。

小椋家の皆さんにとってはなんてことない夕餉だったのかな。
お邪魔させていただいた私には、なんという贅沢な時間だったことだろう。

ふと、木地屋の人びともまた「ルーツ」にこだわって生きている人たちなんだ、と思った。だから、こんなに親しみを感じてしまうのかな。

翌朝、お店で一目惚れした白木のランプシェードと、正幸さんが作られたボウルを購入。これで、京都に帰っても南木曽の空気と、榮一さんたちの「木と共に」の心をいつでも感じられる。
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皆さんと記念撮影などし、8時台のバスに乗って南木曽へ。
忙しい中、バス停までAちゃんと直子さんが見送ってくださった。
バスにゆられながら、Aちゃんのことを思う。
大学の漆芸科を目指している高校生のAちゃん。
彼女の感性で生み出される器に出会えるときが近い将来やってくるのが楽しみでならない。
木地屋の跡取りが言わずもがな「息子」だった時代を越えて、Aちゃんが木地屋の歴史の、新しい1ページを切りひらいてゆく予感がする。
私より年若いAちゃんをこれから心から応援したい気持ちになる。

車窓から見えるのは、正幸さんが「好きなんだよね〜」と伝えてくださった、何種類ものみどり色が彩る春の山々。今もあちらこちらで木地屋さんの一家が歩いているような。
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プラスチック製品の時代をくぐり抜けて、人びとが変わりたい・変わろうとしている今、木地屋さんの生み出す器に私たちは出会わないといけないのではないか。
1つの器から、樹齢数百年の木の命を敬い、大切に受け継いできた技でその命を蘇らせる木地屋の人びとの生き様が伝わってくる。
日々の暮らしの中に、自分のそばに、1つでもいいから、携えてゆく必要があるように思うのだ。


*木地屋さんのことは、直子さんの本を読むまでまったく知らなかった私です。以下、直子さんの本から引用してご紹介します。“「木地(きじ)」とは、漆を塗る前の木でつくられた素地のことである。木地には曲物(まげもの)、指物(さしもの)、刳物(くりもの)、挽物(ひきもの)などがある。木地をつくる職人を「木地屋」という。「木地」とひとことでいっても、木地の種類が違えば、つくる職人も、道具のつくり方も材料となる木も異なる。”ちなみに、木地に漆を塗る職人を「塗師屋(ぬしや)」といいます。詳しくは、直子さんの2冊の本をぜひお読みください。

南木曾の木地屋の物語―ろくろとイタドリ

南木曾の木地屋の物語―ろくろとイタドリ

  • 作者: 松本 直子
  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 2011/04
  • メディア: 単行本



崖っぷちの木地屋―村地忠太郎のしごと

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  • 作者: 松本 直子
  • 出版社/メーカー: 未来社
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 単行本



工房やまと
南木曽へツアーを組んで、正幸さんたちに会いにゆき、木の魅力を味わう旅を企画したいと思っています。6/4〜12まで正幸さんも参加の作品展が名古屋で開催されているようです。行きたいです〜。
 木で食す ー木のさじ・漆のうつわー @canna家具店

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